HOME > 風俗嬢コラム Worker's Live!! > Sex Workerが観るSex Work映画〜その15 最近の邦画3本立て


Woker´s Live!!:現役・元風俗嬢がえがく日常、仕事、からだ

gl-live3

Sex Workerが観るSex Work映画〜その15 最近の邦画3本立て Photo

つまんなそうだし怖そうなので観るのを先延ばしにしていた映画をどさっとまとめて3本観てみた。


【風俗行ったら人生変わったwww】

佐々木希が風俗嬢役をやるってことで話題になってたけど、内容を調べてみたら「非モテコミュ障童貞が買春の場で知り合ったすごくかわいくてホントは純真な風俗嬢とトゥルーラブ!するストーリー」「電車男のホテヘルバージョン」らしいと知って観るのがめんどくさくなってた「風俗行ったら人生変わったwww」。

こんな映画を観て影響された客にセックスワーカーと店外デートする願望を大きく育てられちゃかなわない。
現役セックスワーカーの皆さんの仕事の邪魔になる悪影響映画だろうから流行ってもらっちゃ困る。
そう思っていた。

公開から2年経って流行る心配をしなくてよくなり、気楽な気持ちでこの映画をレンタル屋で借りて観てみるとまあまあ楽しく観られた。

『童貞×風俗×純愛×風俗嬢役が佐々木希』だから当然そうなるだろうと思ってはいたが、
”女の子と一緒に居る”ということだけでいっぱいいっぱいになってしまった遼太郎(満島真之介)のせいで、かよ(佐々木希)はプレイ時間内に服を脱ぐというところまでもいけず、「何もしないでお金をもらう」という形になってしまう。

予約時間通りに待ってるホテルに出向いて、リラックスできるように親しみやすい雰囲気を作って、なかなかやりたいことを切り出せずにいる客にきっかけ作りもしてるのに、なんで「何もしないで」になるのかさっぱりわからん!という毎度おなじみの憤りが湧いたが、
2度目、お金を受け取るのを断るかよに遼太郎が「お店に渡す分もあるでしょう!」と絶叫しながらプレイ料金をきっちり渡すところでマシな映画かもと思った。
「お店に渡す分を節約するために店外で会おうよ」「お店に渡す分を君にあげられるんだから店外で会おうよ」と誘ってくる客が多すぎて、この程度のセリフにも良い印象を持ってしまうだけなのかもだけど。

「話すだけなら客としてホテルから呼ばずに連絡を取り合って居酒屋で会おう」とかよが提案して外で会うようになっても、本名を知ることになって以降も、遼太郎がかよをかよという店の名前のままで呼び続けるのも感じが良いなと思った。
これも本名を知りたがり隙あらば彼氏面しようとする客が多すぎたからかもだけど。

こんな感じのささやかないい印象のあるエピソードがいくつかあって、しんどい場面はないまま映画は終わった。
普通にラブコメだった。

原作の2chをまとめたものを読んでみたら「風俗を初めて利用する人の戸惑い」「セックスワーカーに恋愛する人が感じる苦しさ」が細かく書かれていて読み応えがあった。
映画ではちょっと違う表現に変更されていた、断れない女子が本当はやりたくないAVの仕事を断りたいのを助けるエピソードや、借金整理のエピソードは参考になるかもしれない。

主演2人のインタビューを読んで、この映画のいい印象は演じる人の良さからくるものなのかもしれないとも思った。
佐々木さんはセックスワーカーの日記を読んでみて、いろんな理由で働いている人がいることを知ったと話していたし、満島さんは「みんなが特殊だと思っているような人を、自分たちだけの想像だけで完結させないことが今回の僕のテーマ」と話していて、とても嬉しい気持ちになった。

◉「風俗行ったら人生変わったwww」 http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=346714

◉「風俗行ったら人生変わった」2chまとめサイト http://llike.net/2ch/love/huzoku.htm

◉「風俗行ったら人生変わったwww」の主演二人のインタビュー記事→童貞男・満島真之介と風俗嬢・佐々木希「風俗演じ終わったら人生変わった」 http://news.walkerplus.com/article/42280/


【闇金ウシジマくん Part2】

闇金ウシジマくんというのは、お金と真摯に向き合ってない人を戒めるための映画なのかな?
なんか説教くさい映画だと思った。

この映画にはセックスワーカーが何人か出てくるが詳しい描写はされておらず、どのセックスワーカーもどぎつさや哀れっぽさを演出する彩り程度の登場で、この映画でセックスワーカーになるまでの経緯や生育家族のことが描かれているのは彩香(門脇麦)という高校中退して喫茶店で働いている17歳の子だけだ。
彩香はホストに恋愛したことをきっかっけに個人売春をし、家出し、ホストクラブに通うために闇金を利用し、恋愛しているホストをナンバーワンにするために18の誕生日にAVに出演する。
映画の終盤そのホストと別れた後も借金が残って店舗型のヘルスで働いていた。
彩香がセックスワークをするシーンはどの職種の場面も短めで、個人売春はどういうやり方で客を探すのかや値段はいくらぐらいなのかは描かれていなかった。
店舗型のヘルスは30分8600円が最低料金の店(店の看板でわかるだけ。廊下に貼ってあるオプションの張り紙はよく見えない)で、個室待機の店で、個室は広めだけどシャワーはそれぞれの個室にはついてないんだなぐらいのことは分かる描かれ方だった(この個室待機シーンはこの映画で一番好きなシーンだ)。
AVはリアル18歳女子高生と援助交際オヤジたちみたいなタイトルの単体もので彩香が受け取ったのは500万以下のようだった。

悪徳業者がホームレスに日当1万で誘ってキツイ日雇いの肉体労働に駆り出して働かせて結局3000円程度しか渡さないというシーンでは、送迎代と作業着とヘルメットと軍手のレンタル代と弁当代を引くから3000円になるというピンハネの詳細をセリフで言わせていたのに、セックスワークのお金の流れには興味がないのかな?
温度差あるなあと思った。

個人売春をしていた頃の彩香はマグロで、買春者に「そんなんじゃ売れないよ」と帰る身支度をしながら文句を言われてもベッドの上でぼんやりと聞いているのを映画のカメラが遠くから写しているだけだが、初めてAVに出演した時の表情には映画のカメラがぐっとアップで寄っていて、「痛いです。痛いです」と言った後迷った末のような表情で「気持ちいいです」と言うところを意味ありげに写している。
「遊び半分の小遣い稼ぎ」と「仕事」の違いを描いたつもりだったのかな?

喫茶店で働いていた時の彩香が5円玉でも大事なお金ですと言いながら拾っていたエピソードとつなげて、男が2人半殺しにされた場で「5円玉を拾え。その5円玉を拾わなければ立ち直れないぞ。五円玉だって大事なお金なんだろ?」みたいなことを彩香に向かってウシジマくんがいきなり言い出すのもどうかなあと思った。

現役の頃、待機室で一緒だった子が闇金を利用していて、あたしは闇金にはいい印象もあるので、セックスワーカーと闇金の交流でもっといい映画ができるだろうと思ってしまうなあ。

セックスワーカー同士の交流は、あたしの感覚では丑嶋馨(山田孝之)と戌亥(綾野剛)の関係が近いなあと思う。
セックスワーカーの友情が描かれる映画であんな感じの場面が観たいと思う。

「セックスワーカーウシジマさん」をもし作るなら、性と真摯に向き合わない奴に説教する映画する映画にするといい。
戌亥は行きつけの婦人科か皮膚科の先生かな。
他店の客引きのおねえさんでも良さそうだなあ、戌亥。

「闇金ウシジマくん」の映画の最後には「ヤミ金は犯罪です。命に代わる借金はありません。ひとりで悩まないで、ご相談を」というテロップが出る。
このテロップはすごくいいなあと思った。
「セックスワーカーウシジマさん」の最後には「セックスワークは犯罪ではなく労働です」と出す、もちろん。

◉「闇金ウシジマくん Part2」 http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=347766

【超高速!参覲交代】

この映画はセックスワーカーが描かれていることを知らずに観た。
元タカラジェンヌの舞羽美海ちゃんと好きなアイドル知念侑李が出ているので観たら、深田恭子の役がセックスワーカーだった、という偶然観ることができたセックスワーカーが描かれている映画。

深田恭子の役は「牛久の旅籠鶴屋の飯盛女」となっていた。
飯盛女というのは宿場の奉公人ということで黙認されていた私娼だそうで、内藤政醇(佐々木蔵之介)があん摩ばかりさせて性行為をしようとしないので、お咲(深田恭子)が着物を脱ごうとし、内藤が慌てて止めさせるという場面があった。

内藤はお咲を連れて旅籠を出て行くが、足抜け騒ぎはおきないし、道中も地味な着物に着替えさせたりもしない。
派手な着物を玄人丸出しな着方で身につけているお咲がどういう仕事の人なのか家臣も分かったはずだが、映画の終わりに内藤の妻になって登場するお咲を皆すぐ受け入れている。

説得力は全然ない設定だが、セックスワークが蔑視されない世界がもしあるのならこれで全然不思議はない。
説得力が無いと感じるのは、私娼を連れて逃げれば足抜け騒ぎ、私娼が奥方様になるのは受け入れ難いこと、という予測をしてしまう方に問題があるのだな。

「移りゆく世を楽しく生きるのみじゃ!」という内藤のセリフは、つまらない常識を捨てさせるほどの力は無いように思えたが、深田恭子の美しさが救いになって楽しく観られた。
牛久っていうのもいいよね。下妻物語を思い出して相乗効果が生まれたと思う。

◉「超高速!参覲交代」 http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=347552


本当は「新宿スワン」も観返して4本立てを書きたかったが、観た時のしんどさを思い出すとどうしてももう一回新宿スワンを観ることができなかった。
新宿スワンはスカウトさんを剛にゃん(少年アヤちゃんの影響で綾野剛をこう呼ぶし、綾野剛が好きなのも少年アヤちゃんの影響かもしれない)が演じる映画で、セックスワーカー役は沢尻エリカ。
綾野剛の映画も沢尻エリカの映画も全部観ることにしてるから観たけど、すごくしんどい場面が多かったし多分もう一度観たりするのは無理だと思う。
セックスワーカーが新宿スワンを観るなら心と体の調子がいい時にするのがいいよ。

今回はお薦めできる映画と言い切れない微妙な作品ばかり紹介したけど、次回は超オススメの「デッドプール」を紹介するつもり。
お楽しみに。

Photo
name
職種
売り専です…お客さんも売る側のスタッフも男性の風俗です
自己紹介
大女優とも呼ばれています。気づいたらもうすぐ40歳。なんとか現役にしがみついています。
好きなものは、コーラ!!
皆さまの中には聞いたことがない仕事かもしれません。いろいろ聞いてくださると嬉しいです!!
Photo
name
デリヘル嬢。
ここでは経験を元にしたフィクションを書いています。
すきな遊びは接客中にお客さんの目を盗んで白目になること。
苦手な仕事は自動回転ドアのホテル(なんか緊張するから)。
goodnight, sweetie http://goodnightsweetie.net/
Photo
name
元風俗嬢 シングルマザー
風俗の仕事はだいたい10年ぐらいやりました。今は会社員です。
セックスワーカーとセクシュアルマイノリティー女性が
ちらっとでも登場する映画は観るようにしています。
オススメ映画があったらぜひ教えてください。
あたしはレズビアンだと思われてもいいのよ http://d.hatena.ne.jp/maki-ryu/
セックスワーカー自助グループ「SWEETLY」twitter https://twitter.com/SweetlyCafe
Photo
庄司優美花
非本番系風俗中心に、都内で兼業風俗嬢を続けてます。仕事用のお上品な服装とヘアメイクに身を包みながら、こっそりとヘビメタやパンクを聴いてます。気性は荒いです。箱時代、お客とケンカして泣かせたことがあります。