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Sex Workerが観るSex Work映画〜その1「やわらかい手」 Photo


風俗嬢が登場する映画を風俗嬢が観ると、違和感を感じたりぐさぐさと傷ついたりすることがある。

そしてたいていの風俗嬢は自分の仕事は隠してるから、映画を観て感じたイヤ~な気持ちやもやもやする気持ちを話し合ったりできない。

だからできるだけ風俗嬢が出てくる映画は観ないようにしよう。
と思ってたことがある。

 けど、風俗嬢なんて出て来ないだろうと思って観始めた映画にちょい役で風俗嬢が出て来て殺されたりして、びっくりさせられることはよくあるし、

風俗嬢が出てこなくても、風俗嬢を引き合いに出す台詞はホントによくあるので、ちゃんと避けることなんてどうせできないのだ。あたしが観ないで居たって、世の中の大半の「売りも買いもしない人たち」の風俗嬢イメージは映画やドラマでどんどん作られているわけで、観とかないとまずいような気もするし。

そんなかんじであたしは風俗嬢が描かれた映画を観始めた。
あたり前だけど、おもしろい映画もあったし、ひどいのもあった。
映画自体より公式HPとかで読むレビューに傷つくこともあった。
(だって一般女性が家族のために風俗で働いたってだけのことを「究極の自己犠牲」と書いてたりするんだもの。普通に仕事として働いてるあたしって何よ?って気持ちになるわよ)

風俗嬢映画の話を聞いてもらえる風俗嬢友だちが出来てからは、風俗嬢がひどく描かれてる映画を観るのもむしろ楽しみになった。
「ありえないよね~!」「馬鹿じゃないの?」とか一緒に笑うことができれば、ヒドイ映画もイカレたレビューも活力源だ。

 前置きが長くなってしまったけど、そういうわけで、Sex Workerが観たSex Work映画を紹介して行こうと思っています。

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 一回目からヒドイのを紹介するのもアレなので、最初は「やわらかい手」から。
どの映画でも観たことないけど、風俗で働いた人の多くが感じたことがある素晴らしいことが描かれている映画なの。

 ロンドンの郊外に住んでる未亡人のマギーは孫が難病になって大金が必要になる。
家も貯金も手放してもまだ足りない。
銀行に融資を頼みに行っても、就職活動をしても、担保も職歴も技能も無い自分の現実に向き合わされて惨めな気持ちを味あわされるだけ。

 切羽詰まった気持ちで街をふらふら歩いてたマギーが「高給接客業」の求人張り紙を見て、いかがわしい外観の店に入る。
孫が居る年頃の、太った、「高給接客業」がどういう仕事なのかピンともこない、ド素人の女性がそんなとこに入ったってたいていは門前払いだってことをあたしたちは知っている。
世の中の素人さんたちは「モラルさえ捨てれば誰でも風俗嬢になれる」と思っているようだが、そんなことは無い。
そういうことが分かってるあたしたちにとってはちょっとした奇跡だけども、
マギーがふらふらと入った店は、マギーの魅力を最も高値で売れる店だったの。

 店のオーナーが東京で知ったというコインを入れて壁の穴に性器を突っ込むと、壁の向こうの風俗嬢が手コキでイカせてくれるっていう商売。
マギーはすぐに行列ができるほどの売れっ子になって、ただの壁の向こうの誰かじゃなく「イリーナ・パーム」という源氏名が付き、孫の治療費の前借りを頼めるほどになり、評判のせいで好条件の引き抜きも来るようになる。
すごくおとぎ話な展開だけど、売れっ子になっていく段階で、自分が働く部屋を居心地がいいように模様替えしたり、店から支給されるローションじゃなく自前のちょっと高いローションを使うようになる描写があって、そのディテールの力で「売れっ子になる人ってそうだよねー」という説得力が生まれている。

 セックスワーカーになる前のマギーは、本当の友だちもおらず、財産も能力も無い高齢女性だった。
マギーに本当のことを話せる友だちが出来たり、自分に自信が持てたりするようになったのは、セックスワーカーになってからのことだ。

マギーが手をじっと見つめるシーンがある。

そのシーンにあたしの心は震える。

今までどんな映画でも観たことがなかった、セックスワーカーが仕事を通して自分に自信を持てたり、仕事仲間と友情を築くことができるってことが描かれているからだ。

 セックスワークも他の仕事と同じで、
仕事をすることによって自信を得ることがあるのだ。
もちろん惨めな気持ちを味わうこともあるけど、それだって他の仕事と同じだよね?

 「やわらかい手」は、そういうあたしたちにとって当たり前なことが描かれている貴重な映画。
ぜひ観てみて。

 この映画はレンタル屋の「洋画コメディーコーナー」にあるんだけど、
ふらっと面接に行った店がたまたま自分に向いてるすごく稼げる店で、
オーナーが自分でも気づいてなかった自分の良さを発見してくれて超売れっ子になるっていうのが夢物語すぎてコメディーってことなのかしらね?
「プリティーウーマン」もコメディーコーナーだっけ?
ネタバレになりすぎるからあんまり書けないけど、「やわらかい手」も「プリティーウーマン」も仕事を通して恋人も見つけちゃう映画でもあるのよ~。
正直あたしはその恋愛部分は要らなかったけどなああ…。
まあいいか。

 「やわらかい手」、洋画コメディーコーナーで探してみてね。

 ☆気をつけないと凹むシーン☆
息子に仕事がバレてなじられるシーンがあります。かなりしんどい。要注意。

 「やわらかい手」公式HP:http://www.crest-inter.co.jp/irina-palm/index.html

「プリティーウーマン」はこんな映画>http://movie.goo.ne.jp/movies/p8033/

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職種
売り専です…お客さんも売る側のスタッフも男性の風俗です
自己紹介
大女優とも呼ばれています。気づいたらもうすぐ40歳。なんとか現役にしがみついています。
好きなものは、コーラ!!
皆さまの中には聞いたことがない仕事かもしれません。いろいろ聞いてくださると嬉しいです!!
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デリヘル嬢。
ここでは経験を元にしたフィクションを書いています。
すきな遊びは接客中にお客さんの目を盗んで白目になること。
苦手な仕事は自動回転ドアのホテル(なんか緊張するから)。
goodnight, sweetie http://goodnightsweetie.net/
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元風俗嬢 シングルマザー
風俗の仕事はだいたい10年ぐらいやりました。今は会社員です。
セックスワーカーとセクシュアルマイノリティー女性が
ちらっとでも登場する映画は観るようにしています。
オススメ映画があったらぜひ教えてください。
あたしはレズビアンだと思われてもいいのよ http://d.hatena.ne.jp/maki-ryu/
セックスワーカー自助グループ「SWEETLY」twitter https://twitter.com/SweetlyCafe
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庄司優美花
非本番系風俗中心に、都内で兼業風俗嬢を続けてます。仕事用のお上品な服装とヘアメイクに身を包みながら、こっそりとヘビメタやパンクを聴いてます。気性は荒いです。箱時代、お客とケンカして泣かせたことがあります。