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不本意ながらもノースキン        高村なお Photo

みなさま、こんにちは。そしてはじめまして。高村なおと申します。

東日本大震災の一ヶ月後、長年に渡って勤めてきた吉原のお風呂屋さんを退店して、今は自営の仕事をやっています。いわゆる、「元嬢」です。

さて、今回お話ししようと思うのは、いきなりヘビーなネタです。
「ノースキン」
この用語、どれだけ浸透してるんでしょうね。
「スキン」の反対が「ノースキン」、つまり、バリアなしでの接客、ソープランドのメインのサービスに関わる言葉、ですね。

吉原での最後の数年間、わたくし、その「ノースキン嬢」でした。
スキンからノースキンへの移行のきっかけは、もともと崩しがちだった体調の悪化、そしてガタガタになる出勤、さらには持病の治療のために服用した薬の副作用による顔面ミシュランマン化(ぱっつぱっつというか真ん丸というか……)、そしてとてつもなく悪くなった稼ぎ、です。

そこで一度休んで療養生活を送れれば良かったのですが、わたくしには養わなければならない家族がおりまして、どうにも入院しなきゃ駄目だこりゃというところまでは、とにかく働いてお金を稼ぐ必要がありました。

ノースキン転向直後は体調の悪さもあり、当時のわたくし、フォースの暗黒面に堕ちたアナキン・スカイウォーカー以上に心の中は真っ黒でした。
せめてもの幸いとして、ノースキン転向と体調のいささかの好転で、最悪の時期に比べて、稼ぎは増えました。
が、接客の場でどんなににこやかに穏やかに振る舞っていても、しばらくの間のわたくし、ノースキンで遊んでいくお客さんがたのこと、ことごとく大嫌いでした。

そして何より、その選択をせざるを得なかった自分が、一番許せませんでした。
今思い出すとたまらなくいたたまれないほど、荒れました。
当時の自分がもしこのような場に文章を寄せさせていただく機会を得たならば、まず「もう自分にはセーフセックスを語る資格なんかない!」とお断りしたでしょうし、どうしても書く事になったらお客と自分への呪いの言葉をれんめんと書きつづったことと思います。

それでも、ノースキン転向からしばらく経って、稼ぎの余裕が気持ちにほんの少しでも余裕を持ってきた頃から、わたくし、お客さんがたとこんな会話をするようになりました。

たかむら「スキン、どうしましょうか?」
お客「どっちでもいいよ。」
たかむら(それはもう即座に)「どっちでもいいなら、着けますね。」
お客「あ、ちょっと待って!やっぱり着けなくていいよ!」

不思議なやりとりですが、この会話、何百回も繰り返されました。
最初から「僕はスキン着でお願いします」と申し出て下さったお客さんもいらした一方で、「写真出た時ノースキンだって言われたんだけど。なんでまたいちいち訊くの?」
と、不愉快そうにおっしゃった方もちらほらと。
できれば都市伝説のたぐいであって欲しい「男はみんな生でやりたい」という説の裏付けを取っているようで、日々がっかりしていたものです。

お客さんがたがノースキンを希望なさる理由、性感の問題以外にもいろいろあるようですが……。
長くなりすぎる話ですから、それはひとまずおいときましょう。

本番系のお仕事をしている風俗嬢にとって、スキンを巡るお客さんとの攻防戦、疲れますよね、切実な問題ですよね。
できることなら、皆少しでも安全に、安心して働きたい。あたりまえの事です。
ノースキンで遊んだそのあとに無邪気にも「ノースキンでしていて、怖くないの?」と訊いてくる方もいらっしゃいましたが、……怖いに決まってんだろが!

さいわいにして治せないものにはかかりませんでしたが、持病で弱りぎみのせいもあって、ノースキン時代はちょくちょく性感染症にかかってました。
一番よくかかっていたのは、やはり細菌性膣炎、そしてクラミジア、淋病、トリコモナス(自分の股から魚河岸系の臭気が!)、そんなあたりを、一通り経験いたしました。
もちろん、それらと一緒にあるいは合間に、日和見感染であるカンジダさんも繰り返し繰り返し…。

自分が感染症に弱いのは分かり切っていたので、店規定の検査だけではなく、ちょっとおかしいなと思ったら即通院そして検査をするようにしてはいました。
すると、一ヶ月に二度も淋菌感染したり、三ヶ月連続でクラミジアにかかったり。
もちろん、すみやかに治療して、完治証明取って職場復帰していたのですが。短期間での繰り返しにはかなり、めげました。
このコラムを読んで下さっているお客さんな方、ノースキンでのプレイ、もちろん高リスクですよ。いわゆる「性病」じゃない、そこいらへんにいる雑菌でも、性器の粘膜に感染したなら厄介です。うつされるかもしれないし、貴方がうつすかも知れない。

そして、今現役で嬢であり、ノースキンで働いている貴女へ。
……つけたいよなぁ。ゴムずれ問題とかあるけど、基本、ことごとくスキン、つけたいよなぁ。
だけど、安全より何より、とにかく今少しでも多くの金を稼ぎださねばならない。それも、少なからぬ嬢が抱える現実ってものです。かつて、わたくしがそうでした。

ノースキンで働く嬢の皆様、店が求めても求めてなくても、定期検査はきっちりいたしましょう。そして、ちょっとでもおかしいなと感じたら、定期検査を待たずすぐ受診なさいますよう。
それで性感染症から逃げられるものではありませんが、早いうちに診断をつけてもらって治療するのは、ノースキンの嬢にとっては本当に本当に、だいじなことです。

そして、何よりこれが言いたかったのですが、「絶対にやりたくなかった」ノースキンで働くことになったとしても、自分のことを嫌いになったりなさいませんよう。
セーフセックスには正解がある。「正しいこと」を知っていながら、それができないというのは、つらいことです。
ノースキンで働いていても病気は怖い。あたりまえです。ノースキンで働いていても自分の身体は大事。これもまた当たり前です。
いっそ、「自分は大丈夫」「みんなやってる」と信じ込んで麻痺させちゃった方がラクかも知れません。スキン着をつらぬけなかった自分、最低、とへこみにへこみまくるよりは、こちらの方がまだ心の健康はましな気もします。
が、自分を責め過ぎても、楽観し過ぎても、自分を守ることはむずかしくなりがちで。

嬢時代のわたくしは、腑に落ちないなりに開き直りを得てなんとか生き延びましたが、そこに至る途中、心の面で、自分と自分に近しい人々をずいぶん傷付けました。
わたくし個人の中では、今やノースキンで働いていたことより、その事の方がずっと後悔が大きいです。

かつてのわたくしと「同士」のみなさまが、そんな悲しみや苦しみをひとりで背負いませんよう。はらはらしながら、みなさまがたの上に強運があることを、祈ってます。

最後は、かなり古くから使われているらしい、吉原のあいさつでしめさせていただきます。

みなさま、お稼ぎくださいませ!

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高村まお
2011年春、通算17年に渡る風俗嬢稼業を終えました。非本番・本番、非ハコ・ハコ問わず雑多な業種での勤務経験がありますが、一番長かったのは吉原づとめ。もちろん、一番愛着があるのも吉原の街。あまりに好きすぎて、現在は吉原のお店へのデリバリー中心のメシ屋を経営。フライパンと自分の頭のてっぺんから煙を立ち上らせている日々を送っています。
http://twitter.com/ntakamura
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職種
売り専です…お客さんも売る側のスタッフも男性の風俗です
自己紹介
大女優とも呼ばれています。気づいたらもうすぐ40歳。なんとか現役にしがみついています。
好きなものは、コーラ!!
皆さまの中には聞いたことがない仕事かもしれません。いろいろ聞いてくださると嬉しいです!!
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デリヘル嬢。
ここでは経験を元にしたフィクションを書いています。
すきな遊びは接客中にお客さんの目を盗んで白目になること。
苦手な仕事は自動回転ドアのホテル(なんか緊張するから)。
goodnight, sweetie http://goodnightsweetie.net/
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元風俗嬢 シングルマザー
風俗の仕事はだいたい10年ぐらいやりました。今は会社員です。
セックスワーカーとセクシュアルマイノリティー女性が
ちらっとでも登場する映画は観るようにしています。
オススメ映画があったらぜひ教えてください。
あたしはレズビアンだと思われてもいいのよ http://d.hatena.ne.jp/maki-ryu/
セックスワーカー自助グループ「SWEETLY」twitter https://twitter.com/SweetlyCafe
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庄司優美花
非本番系風俗中心に、都内で兼業風俗嬢を続けてます。仕事用のお上品な服装とヘアメイクに身を包みながら、こっそりとヘビメタやパンクを聴いてます。気性は荒いです。箱時代、お客とケンカして泣かせたことがあります。