Worker's Live!! 風俗嬢(わたし)が描くお仕事とからだ - Girls Health Lab

Sex Workerが観るSex Work映画〜その5「妄想代理人」

あたしが現役セックスワーカーだった頃は、稼ぎ時というものは11月の半ばぐらいから1月8日までだったが、今はどうなんだろうな。

稼ぎ時の始まりが「半ばぐらい」と曖昧なのに、終わりが「1月8日まで」とはっきりしてるのは、あたしが関西で働いていたセックスワーカーで、関西では1/9から3日間えべっさんというお祭りがあり（※1）、関西風俗界には「稼げるのはえべっさんまで」という不吉な言い伝えがあったからだ。
その言い伝えは、ボーイさん、客引きのおばさん、捕まり店長、古株のおねえさん、めったに会わないオーナー、風俗嬢には釣り銭は渡さなくてもいいと思ってるタクシーの運転手、通ぶる客…いろんな人から聞かされた。
最初の年は半信半疑で出勤してしまったが、言い伝えが本当だったので次の年からは9日から長めの生理休暇が取れるように根回ししたものだ…。
あたしが現役時代働いた全ての風俗店では、稼ぎ時は冬のボーナス時期から始まり、クリスマスに一瞬途絶え、クリスマスの翌日から復活し年を越して8日に終わっていた。
稼げない時期は2月まで続くから、バレンタイン営業電話は熱心にしたよね…。
プレゼント代が楽だったわ、チョコレートで済むから…。

今はどうなんだろ？
現役の友達に「最近どうよ？」と聞いたら「ヒマよ〜」という挨拶みたいな返事ばかりさせてしまうことになるから、景気の話は最近あんまりしていない。
この不景気な時代に、セックスワークで稼いだお金で暮らせてるってだけで十分エリートセックスワーカーだと思ってリスペクトしてるし、そのリスペクトしてる接客の達人にくだらん挨拶代わりトークをさせてしまっちゃ申し訳ないからね。

というわけで、今も関西では昔の言い伝えが生きているのか？とか、関西以外では冬の稼ぎ時はいつ終わるのか？とかはゼンゼンワカッテナイ元セックスワーカーのあたしですが、1月のセックスワーカーの皆さんはいつもより時間あるんじゃないか？と思ってセレクトする1月のお薦め作品は連続アニメです。
「Sex Workerが観るSex Work映画」というタイトルなのに映画じゃなくてすいません。
でもDVDになってますし、レンタルビデオ屋で全13話を借りて観るっていうのは、お正月休みっぽくてよくないですか？
このコラムがアップされる日が1月1日と聞いて以来、お正月っぽくおいらんものとかお薦めすべきか？とか考えてたんですが、1月といえばえべっさん以降ヒマだったよね〜さらにヒマになる2月に備えて節約してたよね〜という記憶しか蘇って来ず、絢爛豪華なおいらんものなんかとても観る気分じゃないような気がしちゃって。

全13話のアニメ「妄想代理人」はセックスワークがテーマのアニメではないですが、登場人物の一人が出張で本番仕事をしています。
地味で真面目な女が多重人格で別人格が娼婦をやってて、その娼婦をやってる別人格はケバくてあばずれ口調でわがままでっていう、もう何千回そんな設定見たのって設定なんですよね〜。
せっぱつまってもう死にたいぐらい！って思ってる人のところに小学生の姿をした人殺しが現れてぶっ殺してくれるっていうオモシロイ設定の2004年のアニメでもセックスワーカーってこういう描かれ方なんだね〜、萎える〜とか思いながら観るのが味わい深いかんじ。
買春者の描かれ方も「またこれ？」ってかんじの非モテでデブスでロリコンでフィギュア好きとかで、薄っぺらい味わい。

第10話が楽屋落ち的なアニメ制作の現場の説明で、その説明はすごく細かくてアニメのことを何も知らないあたしにも無駄な知識が増えました。
その回のパクリでセックスワーク界の説明アニメを作ってくれたらいいのにねって思う仕上がり。
いつの日かセックスワークハローワークが出来たら職種解説動画はこういうふうに作ればいいよねと考えたりしました。
セックスワーク業界を辞めたらアニメ業界で働きたいと考える人には、このアニメ制作の解説はこのまま便利に使えそう。

一人で時間つぶしにぼーっと観るのもいいけど、ヒマな1月後半から2月にかけて、嬢仲間とお泊まりで集まってしゃべりながら見るのに最適だと思うんだよねええ。
夢中になって見ちゃうものや、ちょっと席を外したら分かんなくなっちゃう展開のものは向かないから、映画よりテレビの連続ものが合ってるように思うの。
嬢仲間と連続ドラマの一気見をするのは楽しいです（※2）。
一緒に見れば「妄想代理人」に出てくる「別人格が売春しちゃう女」のことも笑い話にできるからね。
家族が病気なわけでも借金地獄なわけでも多重人格なわけでもなく、普通に働いている物語りと関係無い一般セックスワーカーの私たちは笑い話にしないとやっていけないことが多すぎるわ。
「居場所がねえって現実こそが俺の居場所なんだ」っていう「妄想代理人」のラスト近くの元刑事の台詞が沁みるですよ、特に嬢バレを恐れながら何も知らない家族と過ごすお正月はね…。

テレビの連続もののDVDを持って近場の温泉の安いプランに嬢仲間と行こうかって思えるぐらい稼げて2月が迎えられますように！
よいお正月をお過ごしください。

2013年元旦　御苑生笙子

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次回予告（アニメなので付け足したくなって）
「千と千尋の神隠し」で千尋は何を売り何を売らなかったか。（※3）

（※1）えべっさんというお祭りってどんなのかしら？と思ったあなたには「夜叉」という映画をお薦めします。田舎で漁師やってる高倉健が元やくざでミナミに居たって設定でえべっさん描写があります。
（※2）どのドラマでも楽しいけど、「ふぞろいの林檎たち」や「北の国から’95」ならメインキャストの一人の職業がセックスワーカーなのでより話が弾みます、お薦め。
（※3）次回っていうのは嘘です。次回は秋吉久美子がトルコ嬢を演ってる映画か、ラスベガスの娼婦の映画のことを書きます。千尋とカオナシのことはそのうち書きます。

妄想代理人　http://www.mousou.tv/

｜プロフィールを見る｜Entry Data:2012/12/29｜カテゴリー: Sex Work in Cinema, 風俗で働くって？

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