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嬢を怒らせてはいけない風俗店 |
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「お客になにをいわれても、あたし、怒ったことなんか、ありません」
いやな女だ。あたしは、キャロルと顔を見あわせて、おなじ感想をいだいたことを、確認した。
(『泡姫シルビアの華麗な推理』都筑道夫)
お客に対して腹を立てたことない風俗嬢がいるもんか!とまでは思いませんが、超レアですよね。我慢しなけりゃ雰囲気が悪くなるし、我慢を重ねればストレスの元だし、妙なタイミングで爆発しかねないし、ほんとうにめんどくさい。風俗に限らずどんな仕事でも「お客様」への怒りというのは厄介なもんです。
そんなことを考えていたとき、ふと思いついたのが架空企画「嬢を怒らせてはいけない風俗店」でした。そう、あの有名お笑い企画「笑ってはいけない」シリーズの真似です。
何があろうと絶対に笑ってはいけないーーではなく、何があっても風俗嬢を怒らせてはいけない、失敗したら即退場。そんな企画で無事にサービスまで辿りつき、気持ちよく帰ることの出来る参加者はいるのか?
風俗の業種業態は様々ですが、とりあえず派遣型風俗で考えてみました。主にデリヘルやSMが当てはまります。
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第一幕 第一場 風俗嬢到着
「こんばんは、はじめまして、庄司です♪」
「あ、どうも。こんばんは」
~TVから流れるAV女優の喘ぎ声。
\アウト!/
嬢の到着を待つ間、AVをご覧になる方は少なくありません。そのお気持ちもわからなくありません。
でも、風俗嬢仲間の評判はイマイチです。
「レイプ物や盗撮物だと身の危険を感じる」
「AV嬢の体つきへの批判(乳首の色や体のラインなど)に同意を求められるとしんどい」
「どう考えても演技や演出なのに”気持ちよさそう””あんな風にやりたい”と言われても…」
部屋のインタホンが鳴ったら、アダルトチャンネルを切ったほうが無難かもしれません。
第二場 風俗嬢、店に電話を入れる
~電話で話している間にお尻や胸を撫でたりくすぐったりする。
\アウト!/
意外ですか?実は超アウトです。
こういうガッツキ行動についての評判は最悪です。
「殺意が湧く」
「やる気なくなる」
「ウンザリする」
男性のほうからすれば「テヘヘ」くらいでしょうが、嬢からすれば「シネ」です。
口では「もぉ~ダメですよ~☆」と言ってても、内心では怒りの炎が燃え盛っています。
第三場 お湯を張る間
「今日、オレで何人目?」「1回で幾らもらえんの?」
「儲かってしょうがないでしょう」「趣味と実益兼ねてるね」
\アウト!/
「聞いてどうすんの?どうしたいの?」
「またか」
「趣味?どこが?仕事ですから」
親しくもない人に財布の事情を聞かれて楽しい気分になる人はいません。自分だって、取引先の人に給料について訊かれたらイヤでしょう?
ただの世間話でいいんです。それこそ天気の話とか。
第四場a お風呂で。
「庄司ちゃんのことも洗ってあげるよ」
\アウト!/
風俗嬢は、一日何度もシャワーを浴びます。お風呂にも入ります(業種にもよりますが)。
出勤前、接客の前後、帰宅後と。それだけに、四季を通じて乾燥対策は深刻です。
毎回毎回、ボディソープを使って全身を洗っていたら肌はヒリヒリします。
それに、お客が洗いたがるのは乳と尻と股間だけ。石鹸ついた指を膣やアナルに突っ込みたがったり。
最近流行している「泡洗体」をやってるときに動かれるのも迷惑です(ヘタすると二人とも洗い場で転倒する)。
大人しくしていましょう。
第四場b お風呂
「あ、いいよ。さっき入ってきたから」
\アウト!/
あのですね、男性って意外と自分の体(局部を含む)を洗えてないんですよ。
自称「さっき入ってきた」人の7~8人に1人の尻にはトイレットペーパーのカスが付着したままです。20人に1人くらいは恥垢も付いたまま。
多くの風俗店で「プレイ前に一緒にシャワーを浴びてくださらない方」をサービス対象外にしているのは理由があってのことです。
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第二幕 ベッドで
「庄司ちゃんに感じて欲しいな」
「いっぱいイっていいんだよ」
\アウト!/
別に感じたくないわけではないのです。でも、感じる感じないは感覚の問題。
どんなにワクワクして行った有名レストランでも口に合わなかったらマズいのと同じこと。
もちろん、仕事ですから相手が喜ぶような反応を返すように頑張ります。でも「感じること」を強制されるのは辛いのです。それに、お客様が思ってらっしゃるほど、嬢は感じたいとかイキたいとか思っていません。その空間を盛り上げ楽しく過ごせるように努めてはいますが……。
「シオ噴かないの?」
\アウト!/
微妙なとことろではありますが、シオ噴くかどうかは体質によるもの、しかもタイミングや体調もあるわけでして。何より、激しい指入れはケガのもとです。
(挿入行為アリの店で)
本番行為やアナルファックを後背位(いわゆるバック)で行いながら、女性の腕を引張る。
\アウト!/
「女性の体(主に乳)を横から映すため」に開発された演出を、二人きりの場で真似る意味はありません。コレをやる人は例外なく「奥まで入って感じるでしょ」と仰るそうですが……。
肩や腕を引張ったところで、挿入具合に大差はありませんし、大差が出るようでしたら引張りすぎです。感じるどころか関節を傷めます。
この「肩持ち」についてソープやAFオプション店勤務の嬢仲間から聞いたときは耳を疑いました。比較的若い男性に多いそうですが。AVと現実のセックスをゴッチャにしてしまう現象はここまで来ているのですね。
「すごく感じてるね。挿れて欲しくならない?」「挿れて”あげる”よ」
\超アウト!/
非本番系嬢の悪夢のような言葉です。でも、しょっちゅう耳にする言葉。
「当店は本番サービス(男性器を女性器に挿入する行為)は行っておりません」
「本強(挿入行為の強制)はサービス中断となります」
ウエブサイトにどう記載されていようと、お店のスタッフが何と言おうと、聞く気のない人にはムダなんだなあと思わせてくれる呪文です。本番させてくれる嬢もいるかもしれません。でもそれは、あなたの性的テクニックに降参したわけでも何でもなく、ウンザリして諦めたからだと思ってください
非本番系風俗の場合、サービス時間の半分以上が「ムリヤリ(もしくはドサクサに紛れて)挿れられないようにする」ことになることもあります。身を捩る、体を入れ替える、気を逸らすなどと数々の工夫をこらして。
それでもサービスを頑張るのは、お金だけが目的ではありません(そりゃ否定はしませんが)。何より「楽しかった」「気持ちよかった」「ストレス解消になった」と感じて欲しいからです。
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お店を通してお会いしている以上、ルールを守りたい。
けれど、「お店の枠」というルールの中で精一杯サービスしたい。やさしくしたい。
そう思って伺ったホテルの一室で、気力を削がれる言葉や行為をぶつけられてウンザリすることの何と多いことか。
ウンザリその1は、お客様方が「こうすれば嬢が喜ぶ」と本気で思い込んでいるフシがあるからです。体を洗ってあげる、感じさせてあげる、挿れてあげる…。でも、それって「自分がしたいこと」を言いかえてるだけなんですよね。そこに目を瞑っているだけ。
ウンザリその2は「どうせ風俗嬢だし失礼なこと言ってもいいよね。やってもいいよね」がスケスケだからです。「旅の恥はかき捨て」感覚の一種なのでしょうか。それでいて、度が過ぎた行為――乱暴や盗撮など――で店に通報されると(時には)土下座までしたり。
最後にもう1つ、うんと気力を削がれる言葉を。
「キミ、病気持ってない?オレ、家庭あるから心配なんだよね」
アウトもセーフもありません。
だって、返事のしようがありませんもの。
たったいまリスクある行為をしたのは、それを選んだのは、あなたではありませんか。
――長々と書いてしまいました。でもね、本当に、優しくしたいんです。それに、前述の企画なんて軽々とクリアしてしまであろうお客様方もイッパイいらっしゃるんです。風俗嬢に好かれ、内勤スタッフに好かれ、毎回たのしく遊んでらっしゃる方々が。
予約時間を守る、プライベートを詮索しない、「オレだけ特別」を求めない、そんな方々です。イケメンである必要も、お金持ちである必要も、遊び慣れている必要もありません。
お行儀よく遊んでくださる、それだけで十分なんです。チップやプレゼントも必要ありません。だって、そんな方がいらしてくださること、それこそがプレゼントみたいなものなんですから。
ふだん「絶対に怒らせてはいけない」立場の風俗嬢が考えてみた(私はしょっちゅう怒ってますけど)企画はいかがでしたでしょうか。我慢に我慢を重ね、滅多に怒らない嬢が腹を立てるとスゴいですよ。店舗型時代は数々の伝説を聞きました。
帰り際、靴を履いてるお客の背中に飛び蹴りした嬢。
個室でお客に1万円札を投げつけて「帰れ!」と怒鳴った嬢。
お客の股間に向けてカビキラーを噴射した嬢。
文字に起こすと壮絶ですよね。でも、そういう形で怒りを表現できたのは店舗型だったからでしょう。個室から逃げ出せばスタッフも同僚もいるんですから。派遣型全盛期の今は、ホテルの個室で二人きりです。怒れないどころか、相手を怒らせないことに気をつかわなければならないのです。怒りの感情と身の安全を天秤にかけて。
身の安全を考えればストップをかけたい、でも、逆上させて危険な目に合うのは困る。
どうしよう。いつも頭の片隅にある不安です。
怒りのコントロール、嬢仲間の皆様はどうしてらっしゃるでしょうか。