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風俗嬢の毒舌な妹botをつくった理由 柚木美紗 |
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はじめまして。
風俗嬢の毒舌な妹bot中の人こと、柚木美紗(ゆうき みさ)と申します。
風俗嬢の毒舌な妹bot
https://twitter.com/fuujyo_imouto
知らない方も多いと思いますので、はじめに簡単にbotのお話をさせていただきます。このbotは基本的には風俗嬢の妹から、風俗に通っているお兄ちゃんに対してちょっと思ったことを言わせていただいているbot(自動ツイート)でございます。しかし、botと言ってもすべてが自動ツイートなのではなく、リプライの返信の一部やたまにツイートも手作業で返しております。
なぜこのようなbotを作ったのか。
●風俗の取扱説明書(トリセツ)?
それには、2つの理由がありました。1つは「お客様に対する風俗の取扱説明書(案内書)」が必要なのではないかと思ったことです。性交の方法を直接人から教わることがなかなかないのと同じように、おそらく、知人と風俗の遊び方について話したり、人に遊び方を教えてもらったりするという経験は少ないのではないかと思います。同性同士で話題になることはあっても、それは「ネタ」の一つであって、どのようにルールを守ってお互いに気持ちよく遊ぶため、いいサービスをしてもらうためにどうしたらいいかを話す方は多くないのではないでしょうか。
その結果、良かれと思って男性にしていただいたことが女性にとっては嫌なこと、身体を傷つけることである場合が少なくないのではないかと感じたのです。実際に私が経験したことですと、キスをする際にお客様から舌を思い切り吸われたために、舌の先が内出血して赤紫になったことがあります。しかし、そのお客様は「どうだ、気持ちいでしょ?」と言わんばかりの表情で私を見ておりました。また、このキス以外では乱暴にされることはなく、嫌がらせをするようなこともありませんでした。ここは私の推測でしかありませんが、「女の子は強く吸ったほうが喜んでくれる、気持ちいいと思ってくれる」と勘違いした結果、このような内出血に至ってしまったのではないかと考えたのです。その他にも激しい指入れによって膣内を傷つけられたり、乳首がもげるかと思うほど強くつねられたりする経験もしました。私は痛くて顔をゆがめているのに、快楽による顔だと勘違いするお客様もいらっしゃいました。
もちろん、そのような経験をしているのは私だけではありません。風俗嬢の知人やネットでつぶやいている風俗嬢の子たちも同じような悩みを抱えておりました。このような経験からも、やはり強くしたほうが気持ちいいというような勘違いから、女の子の嫌がること、痛いことをしてしまっているお客様が少なくないのではないかと感じたのです。このように痛いプレイをされれば、最初と同じ笑顔を作ることは難しくなりますし、傷ついた箇所をこれ以上触られたくないと感じ、拒否をしてしまうこともあるでしょう。それを一方的にサービスの悪い地雷嬢と言われてしまったら、たまったものじゃありません。
また、中にはルールを守らないことを誇らしげに語るお客様やとりあえず本番行為をお願いする方、お店の外で会おうと交渉してくるお客様も少なくありません。自分にどれだけ自信があるのかわかりませんが、お客様が交渉する時間も女の子が断る時間もすべて大金を払って得た、限られたプレイ時間の中から出ているということに気づいていないのです。そのうえ、女の子が嫌がることを言われたら、その後のプレイ内容や接客にも支障が出来るのではないかという予測もできないお客様が一定数存在しているのです。
今まで挙げたようなことは、良かれと思ってやったのか、限られた可能性に賭けたのか、良し悪しの分別もつかないのかという違いはあっても、女の子の嫌がること・身体を傷つけることには変わりありません。そして、お客様にとっても楽しい時間を過ごすことが出来なくなり、損をする可能性が高い行為です。
この損に気づいていただくため、楽しい時間を過ごしていただくための「お客様に対する風俗の取扱説明書(案内書)」が必要なのではないかと感じたのです。ところが、ここにもう一つ問題がありました。一人の風俗嬢が何かを伝えようとすると、理不尽な批判が多く集中してしまい、聞き入れてもらえないことが多々あるという問題です。
●半手動bot
現在では、Twitterなどで風俗嬢であることを明かし、つぶやきを投稿している方も多くいます。その中にはどうしても仕事に関することが多く含まれており、時には仕事に関する愚痴もあります。そうすると、その愚痴をめがけて耳を疑うような言葉を浴びせてくるような方もいらっしゃいます。また、勝手な解釈からお説教や批判をネット上でも、お客様からもされたことがありますし、他の女の子が同じような目にあっているのを何度も見たことがあります。
その中で「風俗嬢」の気持ちを伝えるには、一人の風俗嬢として伝えるのではなく、架空の人物に風俗嬢代表として語らせたほうがいいと感じたのです。他の女の子との交流を大切にしたいですし、ここでも勘違いや勝手な解釈があっては意味がありません。そのために、リプライを手動で行うことで女の子とは共感し合い、風俗を批判的に思っている方やもろもろの疑問を持っている方とは意見をきちんと交わせるようなbotを目指したのです。
●伝えたいこととは
このbotを通して私が伝えたいことはすごくシンプルなことです。
・お客様にはルール・常識の範囲内で楽しく遊んでいただきたいということ
・風俗は、一生懸命生きていくための「普通」の労働であるということ
たったこの2つを伝えたいだけなのです。私は、風俗という仕事を選び、働いたことを後悔していません。それは非常に面白く、興味深いさまざまなお客様とお話が出来たこと、自分を求めてくださる人間がこの世にいるという経験が出来たからです。たくさん良客様と出会えましたが、その分嫌な思いもたくさんしました。でも、嫌なことがあるのはどの仕事でも同じ。ただ、風俗は病気のリスクが高く、1対1の仕事であるため、危険も大きいです。そして、病気になってもなんの保障もありません。また、精神的にも肉体的にも続けるのが難しい仕事であるため、アルバイトに比べると賃金が高いという部分はあるでしょう。だから、性産業労働は世間のマジョリティにとっては「フツウ」ではないのかもしれません。しかし、一生懸命生きるために、嫌なこともあるけれど、お客様に喜んでもらえるように努力をするのは他の仕事と何ら変わりありません。私は、別に風俗が特別大変なすごい仕事だとも軽蔑されるべき仕事だとも思いません。だから「普通」なのです。
「お互いに病気には気を付けないとね」と言っていただいたお客様のように一方に責任や非難の目を一方に向けるのではなく、お互いに気を付けて、楽しい時間を過ごすことができることを願っております。
※今回は性サービスを提供する性産業労働者として、風俗嬢・女の子という表記をさせていただきました。実際には、性産業には、様々な性別の人が働いています。