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名誉の負傷と憤怒の負傷 |
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こんにちは、庄司優美花です。このたびWorker's Liveのレギュラーメンバーの仲間入りをさせて頂くことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。
さてさて、夏のボーナスシーズン〜お盆休みというメチャクチャ忙しい時期も終わりましたが、嬢の皆さま如何おすごしでしょうか?というかご無事でしょうか?稼げるのは嬉しいけど、心身ともにクタクタになるのが夏のこの時期と年末ですよね。キレイに楽しく遊んでくださる常連さんの優しさに涙が出そうになるほど、その……乱暴だったり欲張り過ぎだったりする、困ったお客たちの比率が急上昇する時期でもあります。
外に出れば暑くてフラフラするし汗でヘアもメイクも崩れるし、室内に入ればエアコンの冷風を浴び……なんてことは、まだ我慢できます(イヤですけど)。
でも、大事な商売道具である局部や乳首が痛くなっちゃうのは困る。場所も場所だし、病院で診てもらうほどじゃないかもしれない、でも手当はしておきたい。そんなときはどうなさってますか。
風俗を始めた20代の頃は治癒能力も高かったし、働いていたのも(いま思えば)超ソフトサービス店でした。「あーあ」と思いながら帰宅しても、一晩寝ればどうにかなっていたものです。初めて「あ、これはヤバい」と感じたのはAVに出演したときのこと。「ノーパン網タイツ」で素股をしたのがキッカケでした。目の細かい網タイツを履いた状態で撮影をすると、モザイクかけの手間を節約できるんだとか。そりゃ結構なことですが、スレるし挟まるしで痛いのなんのって。撮影のあと「ちょっと痛いんです(涙目)」と訴えたところ、スタッフに勧められたのはフェミニーナ軟膏でした。
ちょっと待って!それってスースー成分が入ってるじゃないですか。痒い程度の傷なら効果的でしょうけれど、痛い傷に塗るのはちょっとキツイ。かといってこの痛み、何もしないのも辛いし……助けてくれたのは昔の同僚でした。「M嬢の定番はオロナイン!」
オロナインは効きました。さすが。でも、粘膜部分まで塗って大丈夫なのか心配でしたし(小心者なのです)、仕事の合間に塗るとしたら「味」が気になる。局部の傷が原因で店を休んでしまうならともかく、出勤しつつ傷のケアをするなら「味」も重要です。その辺、軟膏系はちょっと気になっちゃうんですよね。
この数年は「細かい傷にはオイル」で落ち着いています。「爪やすりで指先を傷つけたときはオイルがいい」という話をネイリストさんから伺って、「もしや」と試したところアタリでした。ベテランソープ嬢の方も「乱暴な人や巨根客のあとにはオイルを軽く塗っておく」と仰ってましたし。
オイルも様々ですが、わたし自身はスクワランオイルのミニボトルを愛用しています。アロマオイル(ティートゥリーなど)を使ってる人もいるみたいですし、話題のバイオイルもケア向きかもしれません。とはいえ、この「オイルケア」を使えるのは非本番系もしくはNS店の嬢になっちゃうんですよね……。油脂はゴム製品を劣化させるので、コンドームとの併用が難しいのです。朝晩のスキンケア、ボディケアタイムに加えるだけなら大丈夫でしょうけれど。
ああ!こんな心配をせずに働けたらイイんですけれどねえ!局部の外だけでなく内側にもローションを仕込んでるにもかかわらず、それでも傷がつくってどういうことなんでしょう。嬢の肉体は電気ポットではないのです。ボタンを押したらジャーっと液体が出てきて濡れるわけじゃない。別に感じさせてくれなくていいんです。ただ、傷をつけないでくれれば。
ベッドでアレコレやってれば、ハプニング的に痛い思いをすることはあります。させちゃうこともあります(SM的な意味ではなく)。「ゴメンね、痛かったでしょ」と言われることもあるし、わたしが言うこともある。そういう気遣いがあれば我慢できる痛みもあります。忙しい時期だと、単純に回数を重ねすぎて痛くなったりも。そういう痛みは「まあしょうがないか」って思えるんです。カッコいい表現をすれば「名誉の負傷」みたいなものですもん。
でも、ガシガシやられたり、つねりあげられたり「いいですか、あなたが相手にしてるのは人体ですよ!」と言いたくなるような扱いをされると、身体だけではなく心まで荒みます。名誉の負傷どころか「憤怒の負傷」です。せっかく稼いだお金が治療費にまわるときはなおさらに。
お客の欲望を叶えるのが嬢の仕事であることは否定しません。でも、そこには枠があります。お店のルール、時間の制約、肉体の限界などなど。その範囲で優しくしたいし、楽しんでもらいたい。そして、「お客はあなた1人でない」「嬢にも私生活がある」ことをご理解いただきたいのです。
わたしたちが90分の間だけの愛人――口も固いし、後腐れもない(奥さんと別れて!と泣いたりしない)、しかも床上手――であるために、お客様にもちょっとだけ考えて欲しい。部屋を出てお別れしたあとも、お互いにいい思い出でいたいですもの。
このエッセイが掲載される頃には、この忙しさも一段落してるでしょうか。嬢仲間が負った傷が早く治りますように。痛い思いをする嬢仲間が少しでも減りますように。今までわたしを助けてくれた嬢仲間の知恵が「そんなワザもあるんですねえ!でも使ったことないけど」くらいになる日が来ますように。そう願ってやみません。