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「娼年(石田衣良さん著)」について |
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みなさん、こんにちは。
さて、今回のテーマは、石田衣良さんの小説「娼年」です。
発行は2001年ですが、去年映画化されたこともあり、注目されているようです。
内容にも触れていますので、ご注意くださいね。
映画については、御苑生さんにお任せしましょう!
「娼年」は、当時のお客さんから教えてもらって知りました。
「〇〇くん(当時の源氏名)みたいな主人公の小説があるよ」と勧めてもらったのです。
主人公の森中リョウ(領)は、大学に通いながらバーテンダーをしています。
そこで知り合った御堂静香にスカウトされて、女性客相手のセックスワーカーを始めるのです。
僕は、女性相手のセックスワークは未経験です。
売り専の中には、女性客からの指名を受け付ける店もあるようですけど、僕は働いたことがなかったからです。
でも、初めて読んだ時も、何度も読んだ今も、主人公のリョウには、ものすごく共感を覚えますね。
それにはさまざまな理由があるのですが、大きく二つにまとめられます。
ひとつは、セックスワークやセックスワーカーの描写にリアリティがあることです。
初めてのお客さんに接する時の準備や気持ちとか。
仕事を始めて溜まってくるストレスとか。
売れっ子になるための努力とか。
売れっ子になってきた時の戸惑いとか。
お客さんとのやり取りだけではなくて、リョウや同僚の気持ちの変化にもリアリティがあるのです。
もうひとつは、作者の視点が非常にフラットなことです。
セックスワーカーを見下している感じもないし、持ち上げ過ぎている感じもないのです。
そのため、セックスワークを扱った作品によくある「作者の考えが見え過ぎてしんどい」ことがなくて、主人公や同僚に素直に共感できるのだと思います。
もちろん、リョウと僕では業界が違うし、個々の場面すべてに共感できるわけではないです。
でも、作品全体に流れている雰囲気には、ものすごく共感できるし、読後感が非常に良いのです。
周りの人たちから不快な言葉をかけられたり、不当な行為を受けたりする場面があるのですが、それらに対応するリョウや周りの人たちの対応には、とてもスッキリします。
セックスワーカーが集まる時に、リョウやアズマ(リョウの同僚)にも来て欲しいと思うくらいです。
最後に、僕が一番好きなところだけ紹介させてください(好きなところをあげるとキリがないので)。
どこまでも正しいメグミは強制をやめないのに、法や常識の外にいる咲良は最後の瞬間までぼくの自由を大切にしてくれる。
「逝年」や「爽年」についても、いつか書きますね。
ちなみに、売り専の描写に最もリアリティがあるのは、「二十才の微熱(橋口亮輔さん著)」です。
では、またお会いしましょう。